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乳幼児期の子どもは、身近な人とのかかわりあい、そして遊びなどの実体験を重ねることによって、人間関係を築き、心と身体を成長させます。ところが乳児期からのメディア(注1)漬けの生活では、 外遊びの機会を奪い、人とのかかわり体験の不足を招きます。実際、運動不足、睡眠不足そしてコミユニケーション能力の低下などを生じさせ、その結果、心身の発達の遅れやゆがみが 生じた事例が臨床りんしょう(注2)の場から報告されています。このようなメディアの弊害は、ごく一部の影響を受けやすい個々の子どもの問題としてではなく、メディアが 子ども全体に及ぼす影響の甚大さの警鐘と私たちはとらえています。特に象徴機能(注3)が未熟な2歳以下の子どもや、発達に問題のある子どものテレビ画面への早期接触や長時間化は、親子が顔を あわせ一緒に遊ぶ時問を奪い、言葉や心の発達を妨げます。
(社団法人日本小児科医会 < http://jpa.umin.jp/downIoad/media/proposal02.pdf>
2010年6月18111良得による)

 専門家からは「テレビをやめて積極的に外遊びをしましょう」「自然の中で遊びましょう」という意見が聞かれますが、お母さんたちは進んでテレビを見せているのではなく、地域に出ても同世代の子どもがいない、 昔と比べて自然がなくなった、という問題もあるのだと思います (中略)
 多くの親は、テレビの長時間視聴がよくないことを自覚しており、見せる内容にも気を遺っています。生活の中からテレビを排除するだけではなく、一日に六時間も七時間も子どもにテレビを見せる親の背景に何が あるのかを考えなければ、問題の根本的な解決にはならないのです。
 したがって、私たちの生活スタイルと、予どもにとって望ましいテレビ視聴のあり方のバランスをとりながら、これらの検証を進める必要があるのではないでしょうか。、
(小西行郎『早期教育と脳』光文社新書による)
(注1)メディア:ここでは、テレビやビデオ
(注2)臨床りんしょうの場:実際の診察、治療の現場
(注3)象徴機能:ここでは、身の回りのものを、例えば言葉などで表す働き