音楽や美術、彫刻などの芸術は、聴く人、観る人の批評によって育てられる。悪い演奏をしたら、良くない作品を出品したら、その芸術家は次に表舞台に出る機会を失う。
ところが、医師や看護婦が行う医療の実践を評価できる患者は作られてこなかった。一般の人に知識を与えず、医療について評価できる患者がいない。だから医のアートが発展しないのである。
これは患者にとってはもとより、医療者にとっても不幸なことではないか。
(日野原重明『いのちの言葉』による)