Fさん(72 歳,男性)は数か月前から食欲不振があり,体重も減少した。市内の総合病院を受診したところ,末期の胃がん(gastric cancer)と診断され,緩和医療を受けることを勧められた。Fさんの今の心情を,キューブラー・ロス(Kubler-Ross, E.)の提唱した心理過程の第1 段階に当てはめた表現として,適切なものを1 つ選びなさい。
- 「病気を治すためなら,財産を全部使ってもいい」
- 「なぜ私だけが病気になって,死ななければならないのか」
- 「診断は何かの間違いで,とても信じられない」
- 「死は誰にでも訪れる自然なことだから,受け入れよう」
- 「末期がんなら,何をしてもどうせ無駄だ」
【 正答:3 】
解説
キューブラー・ロスは、死の需要のプロセスである「死の5段階説」と唱えた。
- 第1段階:否認
- 自らの命が危機にあり、余命があとわずかである事実を理解しようとするが、感情的にその事実を否認している段階。
- 第2段階:怒り
- 「なぜ、自分が」という、死に選ばれたことへの強い反発がある。
- 第3段階:取引
- 死ぬことはわかったが、もう少し待ってほしい。財産を寄付したり、これまでの行為も改めるといった取引をしようとする。
- 第4段階:抑うつ
- 神や仏に祈っても、死を回避できないことを悟る段階。悲観と絶望に打ちひしがれ、憂鬱な気分になる。
- 第5段階:需要
- 生命が死んでいくことは自然なことだと、死を受け入れる。