エラーを防ぐため、ブラウザの戻る機能ではなく、『問題へ戻る』ボタンで戻ってください。
〔事 例〕
Eさん(67 歳,女性,要介護3 )は,1 年前,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)で倒れて,左ひだりかたまひ片麻痺,体幹機能の低下が残った。排はいせつくんれん泄訓練を目的として介護老人保健施設に入所した。入所時のEさんは,不自由でも,右手でベッド柵を掴つかんで起き上がることやベッドの端に座ることはできたが,立位保持はできなかった。おむつを着用しているが,「おむつは嫌」と自分の気持ちを訴えていた。医師は着脱と拭く行為には介助が必要だが,車いすから便座に移ることは可能であると判断した。F介護福祉職はアセスメント(assessment)を行い,本人の思いを考慮して介護計画の短期目標を,「車いすから便座に移り排はいせつ泄する」と設定して,評価日は1 か月後とした。理学療法士と連携して,トイレで移乗のための立位訓練を始めた。
2 週間が過ぎた頃,思うような成果が出なくて,Eさんは嫌気がさしてきた。複数の介護福祉職からEさんの訓練拒否が報告されるようになった。F介護福祉職がEさんに理由を尋ねると,「あまり人の世話になりたくない。みんなに迷惑がかかるのでおむつのままでいいわ」と言った。
Eさんのニーズとして,最も適切なものを1 つ選びなさい。
  1. 移乗訓練をやめること
  2. トイレで排泄ができること
  3. 左片麻痺をなくすこと
  4. おむつに戻すこと
  5. 早く家に帰ること

【 正答:2 】

解説

  1. × 事例に「トイレでの以上のための立位訓練を始めた」とあり、トイレでの排泄を希望されていると考えられる。本人の気持ちに沿っているようで沿っておらず、「医師は着脱と拭く行為には介助が必要だが、車いすから便座に移ることは可能であると判断した」という客観的情報を活かしきれていない。
  2. 〇 便座への移乗訓練も必要であるが、解決すべき課題は、トイレで排泄を済ませられるようになることである。座位保持できる身体機能であることから、現時点の状況下であるなら、トイレ排泄への支援と移乗の訓練を分けることが望ましい。
  3. × 麻痺の進行も防ぎたいが、今回の設問では麻痺の状態をなくす支援がEさんの真のニーズであるとは考えにくい。
  4. × おむつを着用しているが、「おむつは嫌」と自分の気持ちを訴えていた。この情報と医師による客観的に判断された情報、介護福祉職が本人の思いを考慮してアセスメントをしたにもかかわらず、本人の意向だからとおむつに戻してしまっては、利用者の心身の重度化が心配である。
  5. × 家に帰って生活することが望みであることは推測できる。そのためにはまずは、在宅復帰に向けた支援を検討していく方向性を持ちつつ、現時点の課題を導き出し着実に成果が出るように支援する必要がある。思うように成果が出ないことに障害の需要がしきれていないことなど心理的な面の支援も必要である。