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AとBとの間で、5か月後に実施される試験(以下この問において「本件試験」 という。)にBが合格したときにはA所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した(以下この問において「本件約定」という。)。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. 本件約定は、停止条件付贈与契約である。
  2. 本件約定の後、Aの放火により甲建物が滅失し、その後にBが本件試験に合格した場合、AはBに対して損害賠償責任を負う。
  3. Bは、本件試験に合格したときは、本件約定の時点にさかのぼって甲建物の所有権を取得する。
  4. 本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件試験に合格しても、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。

【 正答:3 】

解説

  1. 本件約定は、A所有の甲建物をBに贈与するという贈与契約であるが、これは「5か月後に実施される試験にBが合格したとき」という、将来の不確定な事実の成否にかかわるものであるから、停止条件付の贈与契約となる。
  2. 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することを禁止されている。本肢では、本件約定の後、Bの試験合格という条件の成否が未定の間に、Aが甲建物を放火によって滅失させていることから、Aは、 Bが試験に合格した場合に甲建物の贈与を受けることができるというBの利益を害している。よって、その後Bが試験に合格し条件が成就した場合には、A はBに対し、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償責任を負うこととなる。
  3. 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。よって、Bは、本件試験に合格したときは、合格の時から甲建物の所有権を取得するのであって、本件約定の時点にさかのぼって所有権を取得するのではない。
  4. 意思能力のない者がした法律行為は無効であるとされている。したがって、本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、 AがBとの間でした本件約定は無効であるから、Bは、本件試験に合格しても、 本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。