問題
第10問
遺言及び遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 自筆証書の内容を遺言者が一部削除する場合、遺言者が変更する箇所に二重線を引いて、その箇所に押印するだけで、一部削除の効力が生ずる。
- 自筆証書による遺言をする場合、遺言書の本文の自署名下に押印がなければ、自署と離れた個所に押印があっても、押印の要件として有効となることはない。
- 遺言執行者が管理する相続財産を相続人が無断で処分した場合、当該処分行為は、遺言執行者に対する関係で無効となるが、第三者に対する関係では無効とならない。
- 被相続人がした贈与が遺留分減殺請求により全部失効した場合、受贈者が贈与に基づいて目的物の占有を平穏かつ公然に20年間継続したとしても、その目的物を時効取得することはできない。
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正解は、 4 です。
解説
- × 二重線を引いて押印するだけでは変更の効力は生じない。自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
- × 自筆証書遺言の押印は、必ずしも本文の自署名下にある必要はない。特例には、遺言書本文を入れた封筒の封じ目にされた押印を、民法968条1項の押印として認めたものがある。
- × 判例は、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定しているが、相続人が、この規定に違反して、遺贈の目的不動産を第三者に譲渡し又はこれに第三者のため抵当権を設定してその登記をしたとしても、相続人の処分行為は無効であり、受遺者は、遺贈による目的不動産の所有権取得を登記なくして処分行為の相手方たる第三者に対抗することができるものと解するのが相当であるとしている。
- 〇 被相続人がした贈与が遺留分滅殺の対象としての要件を満たす場合には、遺留分権利者の滅殺請求により、贈与は遺留分を侵害する限度において執行し、受贈者が取得した権利はこの限度で当然に遺留分権利者に帰属するものであり、受贈者が、贈与に基づいて目的物の占有を取得し、民法162条所定の期間、平穏かつ公然にこれを継続し、取得時効を援用したとしても、それによって、遺留分権利者への権利の帰属が妨げられるものではない。