宅建過去問

令和元年 第4問

問題

第4問
不法行為に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. 放火によって家屋が滅失し、火災保険契約の被保険者である家屋所有者が当該保険契約に基づく保険金請求権を取得した場合、当該家屋所有者は、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除しなければならない。
  2. 被害者は、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合でも、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除されることはない。
  3. 第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとしても、当該第三者が当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負うことはない。
  4. 名誉を違法に侵害された者は、損害賠償又は名誉回復のための処分を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる。

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正解は、 4 です。

解説

  1. 損益相殺とは、不法行為によって損害を受けた者が、損害を受けたのと同じ原因により利益を受けた場合に、その利益を損害から控除することをいう。火災保険契約に基づく保険金請求権などにより得た損害保険金は、保険料支払いの対価として支払われるものであるため、 被保険者が不法行為により利益を得るものではない。したがって、保険金請求権により得た損害保険金は損益相殺として控除されるべき利益にはあたらない。
  2. 損益相殺は不法行為により受けた損害と同一の原因によって得た利益が、その損害と同質性を有する場合に認められる。したがって、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除されることがある。
  3. 行為者を教唆した者は、共同行為者とみなして、共同不法行為者として、その損害を賠償する責任を負う(民法719条2項)。そして、 第三者が債務者を教唆してその債務の全部又は一部の履行を不能にして、債権者の権利行使を妨げ、これによって損害を生じさせた場合には、債権者は当該第三者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる(判例)。
  4. 他人の名誉を段損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる(民法723条)。また、名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる(判例)。